第1位 ニュース速報(919票)


第2位 株式(785票)


第3位 CD-R,DVD(736票)


第4位 FF・ドラクエ(717票)



第5位 海外サッカー(709票)
第6位 漫画キャラ(609票)
第7位 宝塚・四季(301票)
第8位 邦楽(295票)
第9位 園芸(220票)
第10位 バイク(132票)

ノコノコと付いて来た  ◆F/WveZadCU 氏による観戦記(はじめFF・ドラクエ板に投下されたもの)
ざわざわ。ざわざわ。
どうも騒がしい。
話によると千人以上の人々が集ってるらしい。
周りを見渡せば様々な格好をした人々が息を巻いている。
朝から数えれば既に三千人を超える人が現れているそうだ。

僕は誘われてここに来ただけだ。
お気に入りの場所で話しをしていただけ。
突然「今日が投票日だから来てください。」なんて言われてノコノコと付いて来てしまったのだ。
正直後悔しはじめている。
そんなものいくかと話を蹴った隣の人が正解だったかもしれない。

「負けるかもしれないけど最後まで頑張ろう!」
近くの集団から声が聞こえる。
一人一人が植木鉢を持っている変わった集団だ。
「うん。ほのぼのと・・・でも最後まで楽しもうね。」
一人が答えて近くのタンポポに水を上げた。
道端に咲いているタンポポは久しぶりの水に喜んでいる。

どうやら楽しいことらしい?
彼らの話を聞くと楽しいけど勝ち負けがあるようだ。
良く見れば泣きたそうな顔を堪えている気もする。

更に歩き続ければ、今度は遠くから声がする。
歌?
男装の美しい女性が綺麗な歌声で歌っている。
それを静かに聴く周りの人たち。
仮想大会でもやっているのだろうか?
しかしこの歌声はいい。
一生懸命練習したことが分かる歌声だ。
この日のために頑張って来たのだろう。
一分ほど立ち止まって聞いていった。

「勝つぞーーー!!!」
突然大きな声が響き渡る。
「オオオーーーーーー!!!」
そしてそれに応じる無数の声。
僕を案内している人物が口を開く。
「中にはみんなで力を合わせている人々も居るのよ。私たちもなんだけどね。」

声の上がった集団を見つめる。
どうやら今日は『連合』の中の一つが出場するらしい。
力を合わせる。
勝つためには大切なことだ。

「うおーーー。私はどこに入れればいいんだーーー!」
中にはそう言っている者も居る。
協力するということはどうも複雑なことらしい。
「どっちも応援しよう!どっちも大切だからな!君はあっちに入れたまえ。私はこっちに入れる。」
ノートパソコンを広げた男が答える。
「よし!わかった!みんな頑張ろう!」

複雑な協力関係。二手に分かれて失敗しなければいいが、乗り越えれば本当の信頼関係を得ることも出来るかもしれない。
協力するということはそういうことなのだろう。

出場するという集団の一人が僕の案内人に声を掛ける。
「お互い頑張りましょう。出来ることならお互いに勝ち抜きましょう。」
案内人はペコリとお辞儀を返した。

更に進む。バイクを囲んでいる集団を見つける。
「バイクカワイソス。」
「バイクカワイソス。」
「バイクカワイソス。」
呪文の様に言葉を呟きながらバイクに乗った青年に話しかけている。
どうやら応援をしているらしい。
「君は本当に頑張ってる。その姿に感動した。僕は是非君を応援したいんだ。」
この集団は今までの集団と違って統一性がない。
バイクの青年に心を打たれて集ったのだろう。

その反対側では賢そうな男たちがパソコンを打っている。
「今の状況からだと明日は数値が下がっているかもしれんな。今日買ったのは失敗だったのかもしれん。」
「それは明日やってね!今日は仕事するの!」
「いや・・・仕事の話なんだが。」
「明日は試合ないよっ!数値下がるも何もないよっ!」
二人の男の話に別の男が加わる。
「冷静に計算すればいい。私たちはこの日の為に長い時間を掛けて分析し準備してきたのだ。」

冷静な計算と準備。これも勝つためには必要なことだろう。
ここの集団はそれをわきまえているらしい。

「どこまで歩けばいいの?」
僕は案内している人物に尋ねる。
「もうすぐですよ。」
この返事は何度も聞いた気がする。

そうこうしているうちにウォークマンを持っている人が増えてくる。
そして一人の男が私に声を掛けてくる。
カセットテープを聴いて欲しいらしい。
私は試しに聞いてみた。
懐かしいメロディだ。私の生まれ育った国の音楽だ。
男は頭を下げて去って言った。

「自分達の良さを宣伝しているのよ。みんなそう。」
案内人が告げる。
言われて周りを良く見れば様々な絵が置いてある。
私の知っている有名な漫画の絵もある。
面白いものからシリアスな物まで様々だ。
一人の男が新しい絵を飾る。
あっ!あれは子供から大人にまで好かれているヒーローの絵ではないか!
私は変わった集団や心のこもった宣伝をみて少しずつ楽しくなってきた。

「いやっほーーー!速報!速報!俺たちが現在一位だぜ!」
祭りと書かれた袴を着た男が騒いでいる。
その男を追っかける袴の集団。そして彼らを無視し、速報の詳細を告げる冷静な男。
踊る人たちも居る。
誰もが嬉しそうだ。本当に嬉しそう。
努力が実っているということだろう。
僕はその姿を見て自分まで嬉しくなってきた。

しかし僕とは反対に案内人の顔色が悪くなる。
「いっ急ぎましょ!」
声も震えているではないか。
僕が声を掛けようとすると、「大丈夫ですよ。分かってましたから。彼らは強い。しかし私たちも負けません。」と告げる。

とうとう巨大な壷が見えてきた。
その周りではリフティングをしている集団が居る。
その中の一人が案内人に声を掛ける。
「最後までどうなるかわかりませんが、正々堂々と闘いましょう。」
案内人は無言でお辞儀する。

次は中世的な格好をした集団だ。
巨大でぶよぶよした生物に乗っかっている。
「おや。誘導できたんだねえ。お疲れ様。そして君、ありがとう。」
どうやら私はお礼を言われているらしい。

僕は列に並び紙を受け取った。
案内人が喋る。
「ここに私たちの名前を書いてください。」
案内人はそう言って後ろに下がる。
どうやら何を書くかは自由らしい。
私は少し考えた。
素直に指定された名前を書いてもいいが、面白い集団はたくさん居た。
僕はチラッと案内人の顔を見た。
とても真剣な目で僕を見ている。
・・・涙も溜めているのではないか?

案内人が僕の書いた内容を知る由はない。
騙すことも出来るが・・・元々好きな場所で遊んでいたからここに来たのだ。
好きな場所の名を記すのも悪くない。
楽しませてもらったお礼としよう。

他の人は何を想ってここに名を記したのだろうか。

必死な気持ちで?あるいは楽しむために?
お祭りだから?応援をしたいから?
勝ちたいから?単なる記念だから?
後の勝利のため?純粋な気持ちのため?
頑張って来た自分のため?友のため?
・・・記した場所が好きだから?

中には僕の様な変わり者が居てもいいかもしれない。
僕は紙を書いてハシゴを登る。そして巨大な壷に紙を投げ入れた。
紙はひらひらと落ちていく。

壷の近くで結果を待つ。ここまで来たら最後まで見守りたい。
時間も少ないため、案内人も来た人に声を掛けるくらいしか出来ないらしい。
結局僕も案内人と一緒に声を掛けて回ることにした。

「最後の枠に残るのはどっちかな〜?」
第三者達が話し合っている。
どうやら自分達の出番ではなくとも見守っている人々が多いようだ。
僕らとサッカーボールを持った集団が競り合っているらしい。

突然袴を着た人物が走り出してきた!
ざわざわとしたあとに皆黙り込む。

「速報!四位は!」

辺りに緊張が走った。
袴を着た人物が大声で続きを言う。

隣にいた案内人が膝から倒れこむ。
喋ろうとしているが声が出ていない。
決着が付いて気が抜けたのだろうか。
周りからは歓声の声が上がる。

サッカーボールを蹴っていた集団が地に伏せて泣いている。
もし僕らが負けていたら僕もああしていたかもしれない。
いけない。ここまでのめり込むつもりはなかったのに・・・。

泣きながら一人の男が案内人のところへやってきた。
「本当に・・・。本当にいい試合でした。これっ・・・これからも・・・がん、がん・・・。」
言葉になっていない。余程悔しかったのだろう。
しかし彼らの涙が彼らの努力を物語っている。

案内人はまた静かに頭を下げた。

僕は岐路に着いた。
今日一日で五千人もの人々が来たらしい。
五千人もの想いが駆け抜けた場所。
様々な物語が描かれたに違いない。

今日ここに来れてよかった。

おしまい。